街を歩けばビオに当たる?~オーガニックライフinパリ~
2009/11/18 ヨーロッパ特派員だより by starlab
前回の注目されるビオコスメ ~Beyond Beauty Paris 2009レポートに続いて、パリのオーガニックについてのお話を。
経済危機のあおりを受けている中、オーガニック(フランス語ではビオロジック“biologique”と言い、ビオと省略。自然農法、または有機農法と訳す)セクターの成長はフランス経済に明るい希望をもたらしており、マレ地区やサンジェルマン・デ・プレ界隈を歩くとスーパーのレジで売られるエコバックを持っているパリジェンヌに遭遇し、買い物に出ればビオという言葉やビオマークがパッケージにデザインされた品物が一番目につく場所に陳列され、ビオラインを次々に発表する食品やコスメメーカーなど、挙げだしたらきりがなく、もはや今は“ビオをうたわなければ時代遅れ”ととれる程なのだ。
変わるフランス人の意識
日本でも公開されたフランス映画、邦題「未来の食卓」は、美しい自然に囲まれた南フランスにある小さなバルジャック村でおきた実話。
バルジャック村のショーレ村長が、子供の未来を守るため、学校給食と高齢者のための宅配食をビオにするという大きな試みに挑戦し、村が少しずつ変化していく様子が描かれている。
もともと農業大国のフランスでは、質の高い良品が比較的安価で手に入るため、なかなかビオ作物が普及しなかったと言われているが、ここフランスにおいても、健康ブームや、環境保全、狂牛病、化学肥料や農薬の乱用、トラサビリティーの問題などもあり、食の安全性に対する意識がここ数年で急速に高まってきている。
例えば街のあちこちに次々と開店するビオ専門店、Biocoop、Bio C Bon、Naturaliaなど、普段行列を好まないフランス人が買い物かごを一杯にしてレジで並んでいたりする姿には正直驚き、毎日パリのどこかで開かれているビオ朝市は毎回多くの人であふれている。
また、安売りを利用して興味本位でビオ商品を買ってみて、その美味しさからリピートする人や、ジャムや乳製品は特に味が凝縮されていて濃いので、最終的に割安になることを知っている人が早々とビオに切り替えており、フランスのビオ農業を推進する公的機関「Agence Bio」が行ったアンケート調査によると、フランス人の44%が少なくとも昨年、1ヶ月に1回はビオ製品を購入しており(前年比2%増加)、ナチュラル志向製品購入者の74%が今後もビオ製品を購入したいと考えていて、そのうち22%はビオ製品の購入を今後も増やしたいと考えていることが分かった。
商品レベルでは、もっとも消費されたのが果物と野菜(77%)で、ビオワインが非常に人気で、新たに29%もの消費者を得た。
その他、乳製品(70%)やスパイス(56%)、肉類(49%)パン類(42%)と続く。また、86%が、ビオ農業が今後も発展していくべきだと考えており、10人中4人が、ビオ製品を購入するため、そうでない製品よりも高い金額を払うのは当然だと考えているということも分かった。
大人気のビオカフェ
ビオのブームは外食産業にも及んでいる。おしゃれなビオカフェやレストランがオープンするたびにメディアでも騒がれ、たちまち大人気になる。
たとえば、パリのおしゃれな若者達で賑わう9区のアベス地区にあるデリカフェ、Rose Bakery(※1)は女性シェフのローズさん(ここだけのお話ですが、あの世界的デザイナー川久保玲さんの旦那様の妹さんだそうです…)が作るビオを使ったお惣菜とスイーツが人気で、昼時は行列ができる程。
お店に入ると、カウンター式の大きなガラスショーケースの中に、色とりどりのビオ野菜で作られたサラダやキッシュなどのお惣菜が並んでいて、お店の一番人気キャロットケーキやイチゴのタルトなどのスイーツコーナーを横目にテーブルへと向う瞬間は本当にワクワク。

あまりの人気に3区のマレ地区に2号店もオープンした。
ここではなんと日本女性がシェフをしており、お惣菜にも和風の影響があって嬉しい限り。
それからもう一つは、すでに老舗と言っても過言ではないLe Pain Quotidien。
1993年にベルギーのブリュッセルでオープンして以来大人気に。今やヨーロッパに10店舗以上、パリではすでに4店舗あるチェーン店。
特徴はなんと言ってもあのナチュラルでアットホームな雰囲気。パンにおいては化学肥料、農薬、除草剤、添加物、保存料、着色料は一切使わず、品質と原料を厳密に守ったまさしくビオ。
各テーブルに置かれた、数種類のジャムやチョコレートクリームは食べ放題。ハチミツや果物、野菜、ジュースやカフェ、紅茶の原料も勿論全部ビオ。週末のブランチにはおしゃれなパリッ子達で一杯。
ビオ普及に国をあげて取り組む
国民がビオを求めれば、国も動く。2007年の大統領選挙時のキャンペーンでは、いずれの有力候補者も環境対策を
政策の中心に据えており、晴れて大統領となったサルコジ氏は、環境配慮型の製品と
サービスに対する付加価値税(VAT)を大幅削減すると公表し、多くの関心を集めた。
また、昨年末、バルニエ農業大臣(当時)はビオ農業を発展させるべく、先の3年間、
毎年1200万ユーロ(約15億円)の予算投入を公表。サルコジ大統領の働きかけで開催された、
環境グルネル会議:Grenelle de l’environnement(※2)の際に決定された目標には、ここから2012年までに、
現在全農地面積の2%であるフランスのビオ農業を3倍の6%、2020年までに20%に拡大するというもので、
1200万ユーロの年度追加予算の使い道は、ビオ農業を始めたいと願う農家の転換支援に当てられた。
また、2009年の収益について、ビオ農業の税額控除の倍額も確約した。
同会議では、農薬の使用半減宣言も出され、行動計画が発表された。
それによると、今後10年のうちにもっとも危険な物質53を徐々に撤廃していき、うち30物質は2008年の終わりまでに撤廃する。
また、今後10年以内に農薬の使用を現在の50%まで削減する、というとても大胆な計画だった。
ビオ給食キャンペーン
既載の環境グルネル会議で、2012年までに学校給食の20%をビオ化することが目標とされたが、この目標を達成すべく、WWFフランスがキャンペーン「Oui au Bio dans ma cantine(僕/私の給食にビオを)」を開始した。
このキャンペーンは学校給食を通じてビオ製品を推奨し、また農業者が農地をビオに転換するよう促す具体的な対策を行うよう市町村に説得することにある。
子供達は将来のフランスを担う大切な存在。その彼らに小さな頃からビオ食を慣習化させ、同時に健康や環境保全の大切さを教え込むという、非常に賢い方法。
また、ビオ給食の普及は、現地で生産された作物を使用するため、移送コストも係らず環境にも優しい。
また、仲介を通さず取引されるため、農業者が適正な利益を得ることも可能にし、地方の雇用を生み出すこともできるというわけだ。
お財布にも優しい100%ビオ食は可能?
広まっていると言いつつも、ビオ食はやはり20%は割高になってしまう。
だからビオを食べたいけれど、高いから手が出ないと思っている人が多いのも現状だ。
そのため、お金をかけずにうまくビオ食を日常に取り入れるにはコツが必要となる。
まず、食材の買出しを頻繁に行い、必要量だけ毎日料理する。
それから安い物と高い物を比較し、商品によって買う店を変える。
パリを中心にそのおしゃれな店舗を増やし続けるチェーン店のNaturaliaでは「今月の果物」がお買い得だし、冷凍食品の最大手Picard ではビオの冷凍野菜が安価で購入可能だ。
EDなどのディスカウントスーパーにも、品数は少ないがビオラインがあるし、スーパーのNouveaux Robinsonsは
全体的に比較的値段が安いので、ローラーのついた大型買い物バックを引いてまとめ買いに行くのも賢い。
それからAMAPという方法もある。AMAPとは、加入会員に提携農家の野菜を週1回会員に配布するサービスで、農産物の新鮮さと美味しさから、今メディアでもとても話題になっている。
バカにならないお菓子代は、手作りが良い。作り方はビオ製品で作るお菓子のサイトをチェックする。
簡単に検索しただけでも100サイト以上あり、需要の多さが伺える。
ビオ食は確かに時間がかかるが、時間の節約をとるか、味と健康をとるかだろうか。
エピローグ
今回、ビオの情報を求めてパリのあちこちを歩き回り、食品、生活雑貨、コスメなど、
当たり前のように身の周りにビオが溢れていることに改めて気付かされた。
Beyond the beauty 2009でも賞を受賞した「Absolution」は、ビオ・コスメ界初のユニセックスブランドだが、
そのコンセプトもあり、パッケージもおしゃれで効果も抜群とあり、早速パリジェンヌに大人気のビオ・コスメサイト
「マドモワゼル・ビオ」での取り扱いも始まり、すでに人気トップ5に入る程の指示を得ているようだ。
第36号からの引用になるが、ロレアル社は、2000年に1851年創業の歴史のある自然派コスメの老舗、キールを買収。
その後は、ザ・ボディーショップ、サノフロール、ピュアオロジーと立て続けに買収。
化粧品広告も世の中を反映するように「癒し」「地球に優しい」などのフレーズが使用されるようになったという。
不況だからこそ、堅実な効果が得られるビオへの人気と注目が集まっており、
環境保護の観点からも世界的にこの流れがますます加速していくことは間違いないだろう。
(※1)Rose Bakery
アベス店:46, rue des Martyrs 75009 Paris
TEL: +33 (0)1 42 82 12 80
マレ2号店:30, rue Debelleyme 75003 Paris
TEL: +33 (0)1 49 96 54 01
(※2)2007年9月に環境相ジュペ氏(当時)が提案し、フランスで開催された環境と持続可能な開発についての政治会議。




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